10 月
02
2007
0

安野モヨコ「働きマン」

「仕事」の現実
「やりたい企画と通る企画とは違う」
「人格と仕事の成果は比例しない」
「自分の仕事ができないのを他人や環境のせいにしていては、いつまでたっても仕事できない」
「やったらやった分報われるというのは理想であって、現実はそうじゃない」
「いつだって自分にとってベストの状況が用意されているわけじゃない」
「(同僚)全員が完璧な会社なんて存在しない」

このマンガの舞台である「出版社」と私の元職場「Web制作・ゲームデベロッパー」は、「制作現場」という共通点があります。

「制作」という仕事は、「締め切り」と「品質確保」というプレッシャーの下でモノを作り出していかなければならず、タフでないとなかなか務まりません。私は今学生で、しかも日本を離れているので、昔を思い出すことはなかなかないのだけれど、このマンガを読んだ時、いろいろな種類のプレッシャーの元で次々と舞い込んでくる仕事を自分の責任感を礎にとにかくこなし、様々な人と関わる中で(衝突する中で)いろいろ他人から学べることは学び、頑張ってきたことを、ふと思い出させられました。

仕事って、理不尽なことは多いし、辛いし、大変だけど、その分、喜びや達成感が得られ、なにより自分自身を鍛えることができます。今、こうして頑張っていられるのは、仕事で身につけた忍耐力と持続性のお陰だと自分で思っています。

働くことは生きること。 あ~、働きたい~。


働きマン (1) (モーニングKC (999))

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12 月
17
2004
0

高村光太郎「智恵子抄」

高村光太郎が一般的に、彫刻家として有名なのか詩人として有名なのかは分からないけど、私は完全に光太郎を「愛を詠う詩人」として認識しています。

タイトルにもなっている「智恵子」は、光太郎の妻です。絵画を通して知り合った光太郎と智恵子は恋愛期間を経て幸せな結婚をしますが、後に智恵子は精神を病み、自殺未遂を起こし、最後は光太郎を残して病気でこの世を去ります。

妻が狂ってもなお光太郎は智恵子を愛し、自分が狂ってもなお智恵子は光太郎を慕います。そんな状況で光太郎が、時には絶望を、時には変わらぬ愛を詠ったのがこの詩集です。

人を深く愛するということは、なんて辛いことなんだ、と思いました。でも、そこまで愛せる人と出会えて、光太郎は幸せだったんだろうなぁ、とも思いました。

「亡き人に」

雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く
枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く

朝風は人のやうに私の五体をめざまし
あなたの香りは午前五時の寝部屋に涼しい

私は白いシイツをはねて腕をのばし
夏の朝日にあなたのほほゑみを迎へる

今日が何であるのかをあなたはささやく
権威あるもののやうにあなたは立つ

私はあなたの子供となり
あなたは私のうら若い母となる

あなたはまだゐる其処にゐる
あなたは万物となつて私に満ちる

私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
あなたの愛は一切を無視して私をつつむ


智恵子抄 (新潮文庫)

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11 月
15
2004
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ダライ・ラマ「ダライ・ラマ自伝」

チベットの宗教的、政治的最高指導者として精力的に平和活動を行い、1989年にはその功績を称えられてノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマの波乱に満ちた半生を、ダライ・ラマ自身が綴った自伝本です。「ダライ・ラマとは何か?」「チベット仏教とは何か?」を分かりやすく紹介しつつも、主な内容は1950年に起こった中国によるチベット侵略と、その後の人民解放軍によるチベット人虐殺、寺院の破壊行為、そして自分自身のインドでの亡命生活と、ダライ・ラマを知ると同時に中国、チベット、そしてインドの歴史もよく分かる内容になっています。

全てダライ・ラマの主観での内容になっているのですが、本一遍通して感心するのが、侵略行為を行った中国にさえも全てを否定するわけではなく、かの国を知った上で肯定する部分はちゃんと肯定しているところです。侵略後、ダライ・ラマが毛沢東、周恩来と話をするために北京に行った時の記述に、

マルキシズム(共産主義)は、万人の平等と正義に基づく制度、世界の悪への万能薬を宣言している。しかし、理論的観念からいえばその唯一の欠点は、人間的存在を物質的側面からのみとらえようとする面であり、また、彼らの理想追求のために用いる手段には疑問に思うところがあった。

とあります。気に入らない相手であっても辛らつな言葉だけを投げつけるのではなく、物事しっかり洞察し、共産主義の良いところを認めつつもその制度の危うさを見抜いているのにはスゴイなぁと思いました。

この本は1990年に発行されたものであり、話もそれまでとなっているのですが、それから14年経った今でもまだ、中国によるチベット侵略が続いています。

私の友達に、去年、チベットにハッパを喫いに行った子がいます(←何やってんだか)。彼が言うには、ラサはチベット人が住む市内を取り囲むようにして中国人居住地が存在し、警察が全く機能してないため、インドのゴアよりも上質なハッパ目当てに外国人が安宿に押しかけているらしいです。なぜハッパがあるのかというと、現在チベットではマリファナの生産が行われており、「上質なハッパが喫いたければチベットに行くといい」と一部のマリファナ愛好者の中で有名なんだとか。ハッパだけでなくケシの実も、普通の食べ物の香辛料に使われているとのこと(食べてもべつにハイにはならない)。しかし現地にはまともな食べものがないため、長居は辛いとのことでした。

中国が「経済開放」とうたって行った侵略の結果が、コレです。外界から隔離され、最後の楽園であった仏教の国が、見る果ても無くここまで堕落してしまい、世界中に散ったチベット難民の帰るべき国が帰ることができる状態でなくなってきていることに、非常になんともいえない悲しみを感じました。


ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

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9 月
13
2004
2

説明することの難しさ(文章編)

昨日に引き続き、今日は「説明することの難しさ(文章編)」について。

文章で説明する際、それを読む相手が目の前にいるわけではないため、相手の理解度を測りながら補足できる「会話での説明」と状況は全く変わります。

読んだだけで理解できるような文章を書くには、

・文章を読む人(ターゲット)を想定する。
・文章を書く前に、どのような順番で話を進めれば分かりやすいか考え、レイアウトをしっかり作っておく。
・ひとつひとつの文章をなるべく短くする。
・大切なことは、最低2回は表現を変えて繰り返す。

などが基本事項となります。

(「Wiki入門」の著者、結城浩さんのサイトにとても分かりやすい文章講座がありますよ。チェキラ!)

前々からすごく気になっているのが、本屋で売っている「解説系の新書」の説明文がとても解り辛いこと!それらの本の著者は、本の内容の分野においてプロフェッショナルかもしれないけど、文章書きとしてはプロフェッショナルでないため、「自分の解っている頭のまま」文章を書いてしまっているのが多く、「導入部分を何かの例えにすればいいのに」とか「一文が長過ぎる」など、読んでて思わず「推敲ポイント」をいっぱい見つけてしまって困ります。

しかしその中で、驚くほど“解りやすい”新書を発見!内容もとても面白いのでここで紹介!


記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)

この本は、脳の海馬部分の記憶の仕組みについて解説した本です。とても難しい内容であるはずなのに、驚くほど解りやすいです。本全体の構成、ひとつひとつの文章、どれをとっても完璧。スゴイ。

著者のあとがきに、「極度に込み入った複雑な脳科学の世界を詳解することは端から無理なことで、「わかりやすさ」か「正確さ」のどちらかを犠牲にしなければいけませんでした。したがってこの本では、せめて大局的な骨格だけでも皆さんに理解していただきたいと割り切り、思い切って表現を端折ったり曖昧な説明をしました」とあります。

「わかりやすさのために表現を端折ったり曖昧にした」とはかなり大胆ですが、彼はこの本を書いている時点で明確に読者が見えており、読者の理解を第一にするためこのような手段を選んだというのは、文章を書く者としてある意味正しい姿勢です。

「人に理解させる文章とは何か?」を知るために、この本を読んでみるのもいいかも!

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8 月
31
2004
6

遠藤周作「沈黙」

この「沈黙」は、島原の乱が鎮圧されて間もない頃、キリシタン弾圧を強いていた日本に潜入したポルトガル人司祭が、棄教を拒み拷問されて死んでいく日本人を目の当たりにして、迷い、苦悩する姿を描いた傑作です。

小説のタイトルにもなっている「沈黙」という言葉は、ストーリー全体を通して主人公のポルトガル人司祭、そして読者に、重く圧し掛かってきます。

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彼が混乱しているのは突然起こった事件のことではなかった。理解できないのは、この中庭の静かさと蝉の声、蠅の羽音だった。一人の人間が死んだというのに、外界はまるでそんなことがなかったように、先程と同じ営みを続けている。こんな馬鹿なことはない。これが殉教というのか。なぜ、あなたは黙っている。あなたは今、あの片眼の百姓が——あなたのために——死んだということを知っておられる筈だ。なのに何故、こんな静かさを続ける。この真昼の静かさ。蠅の音、愚劣でむごたらしいこととまるで無関係のように、あなたはそっぽを向く。それが・・・耐えられない。

「日暗みて、神殿の幕、中より裂けたり」これが、長い間考えてきた殉教のイメージだった。しかし、現実に見た百姓の殉教は、あの連中の住んでいる小屋、あの連中のまとっている襤褸と同じように、みずぼらしく、あわれだった。
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「神は矛盾を孕んだ存在です。」

と、断言すると、どこかから非難されそうな気がしてドキドキなのですが、私はかなり昔からそう思ってきました。

人間の歴史の中で、神の名において始まった戦争がとても多いです。その戦争の戦死者達は神のために死んでいくが、そもそも彼らが思う神が本当に「神」ならば、戦争なんて起こらないのじゃないか、なぜ神という存在は無用な殺傷を引き起こすのか、十字軍遠征なんて明らかに他民族を征服する動機付けに「神」が利用されていただけだったのに、彼らはあれを「聖戦」と信じていた。その信心に、矛盾を感じずにはいられません。

「沈黙」の主人公のポルトガル人宣教師は「神の奇跡」を信じ、どんな逆境にも耐え続けます。しかしそれは、自分の力ではどうしようもないことを、人力超えた力で自分の納得する形で解決することを期待しているように思えました。


沈黙 (新潮文庫)

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Did you make mankind after we made you?
あなたが人間を作ったのは 人間があなたを作った後のことですか?

(XTC / Dear God)
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信じる力を肯定する根拠として「神」が存在するならば、神の存在とは一体何か?と考えてしまいます。私は、神の存在の否定はしません。むしろ、人間はとても弱いから、神は存在していた方がいいと思っています。

XTC / Dear God
(アルバム「Fossil Fuel (Singles 1977-1992) 」収録)

Dear God, Hope you got the letter,
神様 手紙を受け取ってくれましたか?
And I pray you can make it better down here.
私はあなたがこの世をもっと良くしてくれると願っているのです
I don’t mean a big reduction in the price of beer,
ビールの値下げなんかどうでもいいのです
But all the people that you made in your image,
もっと重大なこと、それはあなたの姿に似せて作られた人間が
See them starving on their feet,
飢え死にしているのです
‘Cause they don’t get enough to eat from God,
あなたから糧を得ることができず
I can’t believe in you.
だからあなたのことが信じられない

Dear God, sorry to disturb you,
神様 お邪魔して申し訳ありません
but I feel that I should be heard loud and clear.
でも 大声ではっきりと言わずにはいられないのです
We all need a big reduction in amount of tears,
みんなの流す涙を減らしたいのです
And all the people that you made in your image,
だって あなたの姿に似せて作った人間が
See them fighting in the street,
街で戦っているのです
‘Cause they can’t make opinions meet about God,
あなたが誰なのかという認識の違い、宗教の違いという理由で・・・
I can’t believe in you.
だからあなたのことが信じられない

Did you make disease, and the diamond blue?
病気やダイヤモンド・ブルーを作ったのはあなたなのですか?
Did you make mankind after we made you?
あなたが人間を作ったのは 人間があなたを作った後のことですか?
And the devil too!
あなたは悪魔も作ったのですか?

Dear God, Don’t know if you noticed,
神様 気付かれたかどうか分かりませんが
But your name is on a lot of quotes in this book.
狂った人間達が書いた書物にあなたの名前が何度も出てくるのです
Us crazy humans wrote it, you should take a look,
一度 目を通してみるといい
And all the people that you made in your image,
あなたの姿に似せて作られた人間は
Still believing that junk is true.
まだ偽りを信じています
Well I know it ain’t and so do you,
でも私はもう信じない あなただって信じていないでしょう
Dear God, I can’t believe in, I don’t believe in,
私はあなたを信じない 信じるなんてとても無理だ

I won’t believe in heaven and hell.
天国も地獄も信じない
No saints, no sinners, no Devil as well.
聖者も罪人も悪魔も嘘だろう
No pearly gates, no thorny crown.
天国への罪も 茨の冠も全てまやかし
You’re always letting us humans down.
神様 あなたの存在は人間を落胆させるだけ
The wars you bring, the babes you drown.
あなたは戦争をもたらし 赤子を溺れさせる
Those lost at sea and never found,
海で遭難した者に奇跡は起こらずみな溺れ死んでいった
And it’s the same the whole world ’round.
それは世界中どこも同じ
The hurt I see helps to compound,
人間の苦痛を目の当たりにすると
that the Father, Son and Holy Ghost,
父と子の聖霊なんて
Is just somebody’s unholy hoax,
誰かのでっちあげに過ぎないのがよく分かる
And if you’re up there you’ll perceive,
もしあなたが本当に実在するのなら伝えたい
That my heart’s here upon my sleeve.
嘘偽りなく隠すつもりもないたったひとつの私の本心、
If there’s one thing I don’t believe in…
私が信じられないもの それは

It’s you,
あなただということ
Dear God.
神様 あなたが信じられない


Fossil Fuel (Singles 1977-1992)

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8 月
28
2004
6

高野悦子「二十歳の原点」

1969年6月24日午前2時、国鉄山陰線天神踏切近くで一人の女性が貨物列車に飛び込みました。

彼女の名前は、高野悦子。享年、二十歳。死後発見された彼女の日記が、この「二十歳の原点」です。

「人間は完全なる存在ではないのだ。不完全さをいつも背負っている。人間の存在価値は完全であることにあるのではなく、不完全でありその不完全さを克服しようとするところにあるのだ。人間は未熟なのである。個々の人間のもつ不完全さはいろいろあるにしても、人間がその不完全さを克服しようとする時点では、それぞれの人間は同じ価値をもつ。そこには生命の発露があるのだ。」

これは彼女の二十歳の誕生日に書かれた日記の一文です。私も二十歳の時、彼女と同じようなことを考えていました。

当時、ありとあらゆることに不満を持ち、またその不満の原因が「自分の未熟さ」にあると自分自身気付いていました。だからとにかく「何もかも自分の目で見て、自分で経験し、その結果、何か分かるのかもしれないし、失望するだけかもしれないけど、今(当時二十歳)この時点で不満を自分に当り散らしても、5年10年後何も変わらないだろう」と思い、家を出ました。

新しい土地でたった一人、まずは生活していくため急いで仕事を見つけてがむしゃらに働き、そこから段々知り合いが増え友達ができ、世間知らずだったために何度かバカを見ることもあったけど、辛い思いをするたび、自分の不完全さ(=自分への不満)が薄れていったように思います。

そしてある日、勢い余って海外へ飛び出しました。海外では、日本人であることを優遇されることもあれば、日本人であるがゆえに自分の否でないところまで避難されることもありました。でも、最終的には「私が私自身である」ことが受け入れられることが分かりました。

その時、「この世界、まんざらでもないな」と思いました。これは自分の中ではかなり大きな変化で、「もう一生、死ぬまで生きていくことができる(←よく読むと、変な日本語)」と思いました。

しかし彼女は、未熟であることを自覚しながらも「論理化する」ことにこだわりました。

「生きることは苦しい。ほんの一瞬でも立ちどまり、自らの思考を怠惰の中へおしやれば、たちまちあらゆる混沌がどっと押しよせてくる。思考を停止させぬこと。つねに自己の矛盾を論理化しながら進まねばならない。私のあらゆる感覚、感性、情念が一瞬の停止休憩をのぞめば、それは退歩になる。」

退歩を怖れ、怠惰を許さない性分であるため学生運動にものめり込み、混沌の中、自分の否定と肯定を繰り返し、最後は「不完全さを克服するところに人生の発露がある」という自分の言葉も見えなくなり、貨物列車に飛び込みました。

生き急いでしまったことがとても残念です。


二十歳の原点 (新潮文庫)

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